図1はあまりにも有名なSWOT分析ですが、多くの企業がここを「わかったつもり」でおざなりにしてしまうため、うまくいかない原因となっています。
注意点としては、まず、前段階のシンプルSWOT分析を始めるときは外部環境から始めることです。
先に「強み」や「弱み」から始めると、それにあわせた外部環境しか見えてこないため注意してください。
図1:(シンプル)SWOT分析
●ファイブフォース分析
図2のファイブフォース分析はSWOT分析の外部環境(O/機会とT/脅威)を整理するためのフレームです。
ファイブフォース分析はマイケル・E・ポーター教授が提唱したもので、「なぜ、競争が起きるか?」を原点に置いた「業界環境を中心とした外部環境の分析」になり、競争環境に影響を与える5つの要因(図4)について分析を行うものです。
①~⑤を簡単に表せば、次のようになります。
①の「競争業者」は同業だけではなく、異業種も含めて考える必要があります。
家電量販業界を例にするとネット通販専業事業者など、家電量販企業以外の企業も含んで考えるということです。
②の「新規参入業者」は新規の業者が参入しやすいか、しにくいかという参入障壁がどのような物かということを考えます。
③の「代替品」をカメラで考えれば、フィルムカメラはデジタルカメラの登場により、市場を失いました。
そのデジタルカメラも「スマートフォンの登場により、非常に厳しい状態」に追い込まれています。
また、現在では「スマートフォンに満足できないお客様もあらわれ、再びフィルムカメラの需要も出てきた」というように、代替可能性が高い商品かどうかということを分析します。
④「供給業者」とは部品や材料、商品を卸してくれるメーカーや卸業者のことであり、供給事業者との力関係と影響を分析します。
家電業界ではメーカーの価格統制の時代があり、強い影響力がありましたが、家電量販企業の規模が大きくなるとともに、現在では家電量販企業に価格決定権が移っています。
⑤の「買い手」については競争事業者の客層やシェアなどを分析します。
図2:ファイブフォース分析
●PEST分析
PESTとはPolitics、Society、Economy、Technologyのそれぞれの頭文字をとったもので、マクロ環境を効率的に分析するために活用される分析手法(図3)です。
マクロ環境を4つに分割して、自社が受ける影響を分析していきます。
図3:PEST分析
内部環境分析でも前述のポーター教授が提唱している「バリュー・チェーン」(図4)の分析手法を使用します。
図4:バリューチェーン
バリュー・チェーンは図4の通り、9つの要素から成り立っています。
この9つの要素について自社分析していくのですが、そのポイントは「相対比較」にあります。一言でいえば「競合と比べてどうなのか?」ということであり、競合によって「強み」「弱み」は変わってくるということです。
そういった流動性の中、自社独自の経営資産に支えられた「強み」を創る・探し出すことが重要です。
この強みは経営戦略のコアであり、競合との戦いで必要不可欠な武器になってきます。強みを活かして戦うことが重要です。
これで外部環境分析と内部環境分析がそろいました。
この分析結果を基に図5のシンプルSWOTにまとめます。
図5:シンプルSWOT分析
この図5をもとに「機会・脅威」と「強み・弱み」をクロスしての分析を行います。
SWOT分析は「視点」ごとに分けて行うことが効果的で、
1.経営全体に視点をおいた分析
2.店舗に視点をおいた分析
3.事業単位に視点をおいた分析
4.商品に視点をおいた分析
5.顧客に視点をおいた分析
6.新規事業に視点をおいた分析
―――などが挙げられます。
また、外部環境分析については「顧客」「競合」の2つに影響を与えるものに限定して分析を行います。逆に言えば、「顧客」「競合」に全く関係のない外部要因は分析しても意味が無いということです。
こういった視点から外部環境の機会・脅威を「顧客」「競合」に置き換えた分析を行う場合もあります。
図6:クロスSWOT分析
図6はシンプルSWOTの外部環境分析と内部環境分析をクロスさせたものでクロスSWOT分析と呼ばれています。
シンプルSWOT分析をクロスさせることで、積極的に展開すべき項目や撤退すべき項目が明確になります。
クロスSWOT分析を考えるときにはロジカルシンキングに加え、頭を柔らかくし、斬新でユニークな発想が生まれるようラテラルシンキングを組み合わせることが望まれます。