Step.5:起業にあたっての業種選び

起業の業種選び
質問

起業するときの業種選びは「好き」を基準にしてもいいでしょうか?

回答

はい。「業種選び」で、その後の儲けが変わってきます。「好き」だけでなく、業種の特徴を確認して検討することが大切です。


起業するにあたって、「業種選び」は非常に重要です。

 

 

「会社員だったときにやっていたから」「好きだから」といった理由では弱く、自分ができることに加え、業種の特徴をつかんで検討することが大切です。

 

 

ここでは、「業種選びの6つのポイント」について説明していますので参考にしてください。

1.初期投資の少ない業種

初期投資の少ない業種での起業

飲食業や小売業をオープンする場合、店舗や設備などを揃えねばならないため、非常に多額の資金が必要になりますが、この初期投資を自己資金で賄う方は多くありません。

 

 

その為、実際の相談では起業相談に加え、融資相談のセット比率が高いのですが、借入を行うにしては創業計画書などが十分でない場合が多くあります。

 

 

起業という「失敗が許されない状況」を考えると初期投資に多額のお金が必要になる飲食業や小売業は避けた方が賢明だといえます。

 

  

考えたくないことでしょうが、万一、失敗したときでもダメージが少ない業種を選ぶことが大切であり、その一つが「初期投資の少ない業種」を選ぶことです。

2.固定費の少ない業種

固定費とは「売上高の増減に関わらず「毎月必ず支払いが発生する費用」のことです。

 

 

固定費の代表的な費用として従業員給料や店舗賃料など(図参照)が挙げられます。

 

 

これら固定費は「売上高が0円でも発生する費用」ですので、少ない額で抑える必要があります。

 

 

飲食業や小売業は規模にも寄りますが、オープンから従業員を雇うケースが多いため、計画通りに販売できなければ人件費が経営を圧迫するようになります。

 

 

こういったことから、起業を考えるならば「自分一人からスタートできる業種」が望ましいといえるでしょう。

固定費の少ない業種での起業

3.在庫負担の少ない業種

小売業の場合、在庫管理は非常に重要な項目になります。

 

 

極端な話、商品を仕入れても全く売れなければ資金回収ができず、仕入れた商品全額分の手元資金が減少します。

 

 

在庫を持つ商売ならば、図のような流れが必要です。

 

 

通常は商品の仕入れの締め日があり、その後、支払日を迎えます。

 

 

例えば、毎月末締め、翌月末日支払いという条件なら、5月中に仕入れた商品を6月30日までに売り切れば、仕入れた商品代金分が回収でき、加えて全数分の粗利額が手元に残ります。

 

 

5月中に1万円の原価(仕入値)の商品を100個仕入れれば、6月30日に100万円の支払いが生じますが、この商品を売価1万3千円で100個全て完売すれば100万円の支払いを終えても30万円が手元に残るということです。

 

 

結果として、「自分のお金を全く使わないで儲け分のお金を残せる」のです。

 

 

ただ、このような状態に持っていくには精度の高い様々なプロモーションが必要になるため、小規模店では非常に難しく、全く売れずに資金を在庫として眠らせてしまう場合も多々あるため、リスクは高いといえます。

 

 

ちなみに、上記の仕入値1万円(売値13,000円)の例では、77個の販売ができなければ100万円の仕入額は回収できません(77個×1万3千円=100万1千円)。

 

 

もし、小売業を営むならば、ネット通販を織り交ぜて考え、在庫を絞るのも一つの方法です。

在庫負担のない業種での起業

4.入金までの期間が短い業種

入金までの期間が短い業種での起業

せっかく販売できたのに入金が無く、売掛金が発生したり、入金までの期間が長くなれば手元資金の減少につながります。

 

 

エンドユーザーを対象とする小売業や飲食業の場合は即時入金が基本になりますが、法人をお客様にしている業種は、3の在庫の場合と逆で、商品を納めても入金日まで数十日間キャッシュが入ってきません。

 

 

このタイムラグによってキャッシュが不足し、支払い不能になって経営が行き詰まるのが黒字倒産です。

 

 

こうならないためにも、選ぼうとする業種は「どのタイミングで入金されるのか?」という確認と「どうすればキャッシュの回収期間を短縮できるか?」という工夫が大切になります。

5.定額収入が見込める業種

定額収入が見込める業種での起業

商売を楽にするには、毎月決まった売上が見込める「定額収入の仕組み」を作ることが大切です。

 

 

例えば、コンサルタントで起業した場合、研修・セミナーを業務のメインにすれば、月によって実施回数の多い月と少ない月が生じるため、売上高が不安定になりますし、計画も立てにくくなります。

 

 

毎月の収入を安定させるには、「顧問契約」のように毎月定額収入が見込めるようにすることが大切です。

 

 

特に士業では「(繋ぎとめておくための)低額の顧問料」を設定する場合も多く、一件当たり数千円でも積みあがれば大きな毎月の定額収入になります。

 

 

「毎月、苦しい営業を行い続ける」のが嫌なら定額収入の仕組みを構築しやすい業種を選ぶことが必要だといえるでしょう。

6.粗利率が高い業種

粗利率が高い業種での起業

粗利率を説明する前に、まず「粗利益」について説明します。

 

粗利益は、「商品を販売していくら儲かったか?」という額を示しており、

 

粗利益= 販売価格 ー 仕入額

 

———で表されます。

 

 

例えば、100円で販売した商品の仕入値が70円であれば、粗利益は30円となるということです。

 

 

この粗利益から人件費や店舗の家賃・地代など、様々な経費が引かれていき、最終の利益が確定するため、いわば最初の入口の利益といえます。

 

 

粗利率とは、販売価格と粗利益の比率のことであり、

 

粗利率= 粗利益 ÷ 販売価格

 

———で表されます。

 

 

前述の販売価格100円、仕入値70円、粗利益30円なら、

 

粗利率= 30円 ÷ 100円 = 0.3 = 30%

 

———で表され、粗利率は30%になります。

 

 

この粗利率が低ければ「薄利多売」を強いられることになります。

 

 

薄利多売を行うということは、それだけ「お客様数」が必要であり、お客様数を増やすにはそれなりの費用と時間が掛かります。

 

  

その為、多額の費用を掛けて新規客を発掘しても、粗利率が低くければ経費を回収するのにも時間が掛かり、多くの販売件数も必要になるため、「売っても、売っても儲からない」という状態に陥りやすくなります。

 

 

こういった状況の中、競合との価格競争に巻き込まれれば、すぐに経営は行き詰まるため、選ぼうとする業種や取扱商品の粗利率を確認し、粗利率が低い業種であれば、差別化された商品を扱うなど、粗利率を高める工夫を行いましょう。

7.BASTについて

BAST
出所:TKCグループホームページ https://www.tkc.jp/tkcnf/bast/sample/

「BAST要約版」とは、TKCグループ様が、「TKC経営指標」に収録した業種のうち、中分類86業種及び細分類505業種について、企業経営者が自社の経営状況の確認、および経営方針の決定に不可欠な売上高、成果配分(限界利益率、労働分配率、1人当り人件費)及び収益性、債務償還能力に関する経営分析項目14項目を抽出し収録したものです。

 

 

BASTは原則としてTKC会員以外への販売等を行っていませんが、より多くの企業経営者等に自社の現状分析や経営方針決定等で活用してもらうため、要約版および速報版を公開されています。

 

 

このBASTを利用し、あなたが起業を考えている業種の実績を確認し、計画作成の参考にしてください。

 

 

>>>「BAST」はこちら

ここがポイント

●上記①~⑥の項目を意識して業種を考えることが大切です。

 

●これらに当てはまらない業種の場合、「どうすればクリアできるか?」という工夫を行い、策があるかどうかを確認して決めてください。

 

●これらの他に業種選びでは「業界全体が伸びているかどうか?」も重要な指標になります。

→業界全体が縮小傾向にあるよりも、伸びている方が成功しやすいからです。